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絵を描くこと |
私は何のために絵を描いているか、随分と悩みました。
真剣に絵と向かい合い、自分と向かい合ってきたのですがある時、道を見失ってしまいました。
確か29歳の時だったでしょうか。それは、絵を描くことで何かを伝えたいとか、自分を表現したいとか、
そういったものが無いことに気が付いたからです。
本当に自分が描きたいものは何か?
試してみたいことや、描いてみたいものはあるのだけれど、それを絵にする意図や、表現する意味は持ち合わせていませんでした。
絵を仕事にする?
それは苦痛そのものでした。
描けば描くほど自分の作品の価値が落ちていくように思えて仕方なかったのです。
それで、絵を描くのをやめてしまいました。
描きたいのを我慢していたわけではなくちっとも描きたくなかったのです。
しかし、数ヶ月経ったある時、やっと自分に納得のいく答えが出たのです。
それはものすごく単純なものでした。
「絵を描くことは手段じゃない。むしろ絵を描くことそれ自体が目的だったのだ。」
意味なんてなかったのです。
何となく、そうしたかったからそうしているだけ。
たったこれだけのことです。
理屈も何も必要がなく、誰にもそれを否定できない。
単純で強い極めて自然な純粋な気持ち。
私にとって絵を描くことは、単に自分の意思に従っているだけのことなのです。
余談ですが絵を描いている時には大変な充実感と達成感があります。
生きる意味みたいなものを、感じることもあります。
何故かはわかりませんが自分にとってとてもよいのでしょう。
逆に数日間、絵を描かず絵に携わることを何もしなかった折の苦痛はどんなものかと言うと、
自分の人生を無駄にしてしまったような、
周りにも、ものすごく申し訳ないような、何ともいえない情けない気持ちになります。
絵を描くことに取って代わる充実感を味わった時はもちろんそんなことを思いません。
例えば、ダラダラとTVを見てしまったり、長い間パソコンと向かい合ってしまった割には、
何も物事が改善されなかったりした時です。
泣きたい気分になります。
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